インターパシフィック(神奈川県川崎市) 塗装の匠 大久保忠夫
今回の匠は、(株)インターパシフィックで塗装を担当している大久保忠夫さんです。 毎日工場の中で塗装作業を行なっている、この道20年以上のベテランです。
日頃、お客様と直接お話する機会はあまりないということですが、今回はまさに匠の技とも言える「車の色合わせ」について、お話をお聞きしてみました。
自動車塗装の調色には100種類近くの原色塗料を用意していなくてはならないそうで、塗料が固まってしまうのを防ぐため、攪拌機能を持ったミキシングマシーンというラック(写真右)に収納されています。この工場では多くの輸入車メーカーから指定されている外国製の塗料を使っているそうです。この日、塗装するのはベンツのCL500という車で色はホワイトです。
まず、はじめに塗料メーカーの調色データに基づき計量しながら原色を配合します。単に白といっても黒、赤、黄色など数種類の原色を混ぜて作るのだそうです。出来上がった色をそのまま塗るのかと思ったら、テストパネルに試し吹きをして実車との色をチェックしてからとの事。正面や斜め、右から左からといろいろな角度から色を見比べ、ほんの一滴、黒や赤などを加えるという風に色を仕上げていきます。
「この色合わせの技術が塗装職人にとって、最も難易度が高い仕事。経験もかなり必要です。白い色の中にほんのわずかな他の色を見つけて再現する。それがあたり前のようにできないと塗装職人とは言えないかな。」と、シブいコメント。「同じクルマの同じ色でも、厳密には一台一台色が違うので、丁寧に色合わせが必要なんです。」指定の塗料をそのまま吹いているだけかと思ったのに、そんな簡単なことではないのですね。
色が再現できたら、やっと塗装です。塗面にゴミが付着しないように細心の注意を払います。色塗りと言えばプラモデルしか知らない筆者は密閉型の塗装ブースにも驚きましたが、無菌室にでも入るような専用服?にもビビリました。表の風通しの良いところで塗るんじゃないんですね!とバカな質問をしたら、そんなことしたらゴミだらけで塗装が台無しだそうです。(笑)
思っていた以上に繊細で時間がかかる作業には驚きました。このこだわりと技がまさしく匠なのですね。