ガレージ三友(神奈川県綾瀬市) 板金の匠 剱持佳央
今回の匠は、(株)ガレージ三友で板金を担当している剱持佳央(ケンモチヨシオ 33才)さんです。今回は凹んだパネルを元通りに復元する板金作業について、お話をお聞きしてみました。
板金作業は車のどの部分を作業するかによってその手法が異なります。凹んだパネルの裏側に手が入るかどうかによって使う道具が異なるのです。裏側に手が入る場合は当て盤とハンマーを使い、手が入らない部分の作業はパネルの表側から凹んだ部分を引っ張り出さねばならず、スタッド溶接機とスライディングハンマーを使います。
今回はフロントドアの凹みを後者の方法で板金している様子をお伝えいたします。
まず、はじめにドアの凹んだ部分の塗膜をディスクサンダーで削り落とします。次に銅製のワッシャーをスタッド溶接機で凹んだ部分に次々に溶接していきます。そしてワッシャーの穴に丸い棒を通しスライディングハンマーという、叩くのではなく引っ張る特殊ハンマーで少しずつ引っ張り出します。ただ力任せに引くのではなく長年培った手の感覚を頼りに少しずつ、確実に引き出していきます。引っ張ったり、時にはハンマーで叩いたり、お灸と言って伸びた鉄板を絞る作業をしたりしながら凹んだ鉄板は元通りの形に復元されていきます。
時折手でパネルをなぞって引き出し具合を確認しながら面を平らに整えていました。凹んだ部分を限りなく元通りの形に戻すのが「職人のこだわり」だそうです。
「最終的には塗装で隠れてしまうのけれど、目に見えないところだから手抜きをせずにこだわりたい。」おみそれしました。
表面を脱脂してからパテを引きます。ここからが最後の仕上げです。やはり手のひらで面を確認しながら平滑化していきます。筆者はてっきり、凹んだパネルにそのままパテをもってから平滑に研ぐのかと思っていたのですが、「そんな仕上げをしたら納車後すぐにパテがボロっと落っこちてしまいますよ」と笑われてしまいました。確かに厚化粧より薄化粧が良いに決まっています。
丁寧な仕事はそれだけ時間と手間がかかるものだとつくづく感じました。因みにかかる時間から算出した工賃がパネルの部品代を上回るようだと部品取替えになるそうです。
取材先
神奈川県綾瀬市 ガレージ三友 綾瀬工場